古都忘れ新しい国住みなれば  大切なもの忘れじの春

 

 古都忘れ新しい国住みなれば

 大切なもの忘れじの春

 

 時計の針が二周するのを見つめていた。始まりと終わりで物事がたいして進んでいないことに動悸が少し速くなる。このような進み方をしてればいつかは施設に入れられることになるだろう。

 借用書の担保の欄には幸せな結婚生活、とある。新しい環境に一喜一憂している場合ではないのだ。この街に腰を据え、しっかりと働かなければ私の前からはすべての色が取り上げられていく。期限に余裕があるわけではない。

 にも関わらず、作業の進みが悪いのは、やはり目新しいものに移る意識が問題だろう。それぞれ新しい方、新しい方へ、注意が最大化してしまうのだ。同時に腰を据える場所に魅力がない、というのも問題に思う。

 腕を組み、じっと宙を見つめる。自分の部屋、というのはあまりに粗末だ。私はベランダで作業をしている。自分の部屋、という以上、必要なものはなにか。

 扉。本。

 でもきっとほしいのはそういうものではない。これまで、自分一人の部屋なんていくらでも過ごしてきた。けれどどの部屋でも私は自分の部屋に求める安息を感じたことはなかった。

 それは静かなること。

 集中した空間にのみ、それはあった。

 集中力の中へ。そこで暮らそう。

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