引き千切る感情林を叩きつけ  ここじゃないんだ慟哭夕餉

 

 引き千切る感情林を叩きつけ

 ここじゃないんだ慟哭夕餉

 

「これ、夜も食べたい」

 照明を浴びたような照り返しを見せる卵の色に、ほどよく半熟に焼き上げられた中身。そして健康志向を印象づけるような納豆の粒に、路線変更を余儀なくされた形跡が残る混ざった万能ネギを指さして妻は言った。

「これ、夜も食べたい」

 笑顔で嬉しそうに笑う妻。それですべては満足。

 ところが夕餉の時間。心の中の雑草林は奔放に荒れていた。

「おかず増えすぎ!」

「僕も期限きれるよー」

「こんなにいらない」

「時間がかかる」

「仕事は?ねぇ仕事はーー?」

 薙ぐ。雑草を名刀で薙いでいく。池袋の某所で手に入れた切れ味抜群の鎌はどんな草木もたやすく一刀両断して見せた。残ったのはニコニコと笑いかける草花だけが心に残った。

 遺体をさっと回収し、感謝と共に埋葬。

 荒れ果てた感情林はきれいに整備された。

「うわーっ!」

 喜ぶ妻、溢れんばかりのおかずに箸は追いつかない。ラップをかけながら、鎌は振るわれる。

「君はすごいね、よく我慢できーー」

 ありがとうと鎌を振るった。

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