終わらないルームランナー乗ったから  いつになっても辛くなるだけ

 

 終わらないルームランナー乗ったから

 いつになっても辛くなるだけ

 

 扉の先には各階に設置された業務用空調機の室外機が逆L字に並び、およそ6畳ほどの空間の端に、白と青の幾何学模様が描かれた古ぼけたテーブルがポツンと置かれていた。バルコニーの扉には内側から鍵がかかっていて、開ける前からそこが無人であることは知れた。ほかにもこのビルの使用者はいたが、時代なのかもしれない、たばこを吸うそぶりを見せる人はひとりとしていなかった。一度だけ、「たまには外で仕事がしたい」と電話で話ながらバルコニーに出て行った男がいたが、それ以外でバルコニーを使っている人間は私以外には知らなかった。

 ポケットに入ったそれを思い出すたびに、喉の奥からは得体の知れないつわりのような吐き気が上ってきた。条件反射だろうか、体はずいぶんそれを嫌っているようだ。

 古ぼけたテーブルの近くまで歩み寄り、ビルの合間からのぞく空を一瞥した後、白い箱からたばこを一本取りだした。

 火をつける。肺の中に砂利でも混ぜたような汚水の味が広がるのを感じた。

 煙を吸っても、ただ眉が厳しくしかめられるだけで、舌に広がる味や、肺へ流れ出す煙にも自然の優しさや体内へ摂取する喜びみたいなものを一切感じない。ただただヘドロのような毒物が体内の器官の穴という穴へ流れ込み、詰まり、そして死期を手近なところへ招き寄せる助けというほかない行いを繰り返している。

 心の毒を吐ききってしまえたら。

 この苦しみは、消えるだろうか。

 今日もまた、たばこを吸う。

 繰り返される毎日に、吐き気を催しながら。

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