腹抱え動けぬ人を置き去りに  自分の心配天秤落ちる

 

 腹抱え動けぬ人を置き去りに

 自分の心配天秤落ちる

 

 雷に打たれて立っていられる人間などいまい。それと同じように私は、絶えず降り注ぐ雷原の中をヘルメットもなしに歩いているのだ。それはもう「いち早く脱出を」となるのもわかってほしい。

 ただそれよりも腹を包丁でかっさばかれて内臓を取り出され、助けて、と叫ぶ内縁の者をみたらどう思うか。それを思えば、雷光に打たれる程度しゃんとしようと思うのではないか。

 然りとて人間には限界がある。申し訳ないと心の中で謝罪して、私は紫煙をくゆらせた。絶対に吸えないときこそこの娯楽には味が染みでる。脳内をリセットするのはいいが、すべてを忘れてしまうから、絶えず振り出しへ戻るを繰り返している気分になる。答えは聞くまでもない。私は都合の良い現実を信じた。信じることでしか、娯楽を得られる術はなかった。生きようと、横たわる死体の隣で紫煙をくゆらす。

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