鉤針で背骨をズブリ差し引いた  雷走る夢であったら

 鉤針で背骨をズブリ差し引いた

 雷走る夢であったら

 

 目が覚めると同時に、冷たい冷凍庫に中に横たわっているかのような悪寒が走った。昨日財布を落としたことを忘れてしまっているような違和感に、しばらく体を動かすこともできず、確かな布団の感触をもとに、記憶を再構築していく。

 そこは寝室で、同時に財布を落としたわけでもないことを思い出す。けれどそれに等しい状況にあるのだけは思い出し、改めて厚み3センチの布へ身を埋めたい気持ちに駆られた。

 だが感覚が事実であるだけに、そのまま横になることは許されない。せめてもの手向けという言葉があるように、ダメだったとしてもせめて怠けることだけはしてはならなかった。

 起きた。同時にそれは敗戦を意味した。

 すべて夢ならば良い。良い経験をした、で済む。だがこれは現実と呼ばれる領域にある感覚で、自我がそこに留まる以上、この感覚とは長い時間共に過ごさねばならなかった。

 仲良くしてね、と微笑まれたが、丁重にお断りしたく思う。

 私が悪かったよ、勘弁してね。

 もしこの言葉を読んだなら、私の代わりにそのものたちへ伝えて欲しいと思う。

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