閉ざされた世界で聞こえてきた声十一

 

 中古の本の裏側には千円と書かれた値札シールが貼られていた。お金はアルバイトの給料がまだ財布の中に残っている。小説はこれまでたくさん読んできたが、自己啓発やスピリチュアルと呼ばれる類いの本は読んだことがなかった。なにより引き寄せの法則、というタイトルに興味を惹かれた。未来に絶対なんてない。出来事はどこからきて、どのように決まっていくのか。考えたことはあれど、具体的な知識はなかった。人生の半分を失った今、空いた穴を埋めるのに役立つかもしれない。カゴの中へその本をいれた。

 目当ての節約レシピの本を探したが、何冊かめくってみても、まるで英語で書かれたオシャレな雑誌にしか見えず、とてもじゃないが再現できるような気にはならず、めくっては棚に戻すということを何度か繰り返したあげくに、引き寄せの法則の本だけを買って帰った。

 そこから私の怪しい人生が始まった。

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