閉ざされた世界で聞こえてきた声十七

 大阪公園に隣接されたビルの解放されたカフェで私はその人物と会った。

 年齢は四十歳前後、黒い髪をオールバック気味に整え、わずかな白髪をメッシュのように黒髪に混ぜて整えていた。

 名前を五郎と言った。私は人生の中で何人かの五郎と出会ってはいるが、その名の人物と出会う度に人生が転機を迎えるという不思議な経験をしている。

 カフェはカウンターで好きなものを注文し、受け取った後に好きな席へ持って行くスタイルだった。私はコーヒーを注文し、その人物が先にとった席へと足を運んだ。

「初めまして、五郎といいます」

 まず最初に抱いた印象は、大人であっても見知らぬ人間には礼儀正しい挨拶をする、ということだった。

 これまで四十前後の大人にはたくさん会ってきたが、大抵は面識がある人だったため、全くの初対面の四十歳の大人に会うのはこれが初めてだった。ましてや私はまだ社会に出ていない。まるでこれまでプレイしていたゲームディスクが終わり、新しい章が始まったかのような錯覚を私はこのとき抱いた。

「意識について、興味があるのですか?」

 私は頷いた。友人と始めた一万円生活と同時に手に取った本から学び、生活に取り入れ、気付いたことをSNSの日記で公開してきた。

それを元に始まった出会いだ。もちろん話題はそれになることはわかっていた。スピリチュアルという単語すら最近知った私にとって、この出会いは人生の真実が解き明かされていくような、そんなワクワクを伴う、神秘の旅行が始まる予感を感じさせてくれた。

 実際には、ハリボテだった人生に、新しいハリボテが増えたような結果になったのだが、奇しくも人生を埋め尽くしていた野球と本に連なる経験として、定着してしまうのだった。

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