閉ざされた世界で聞こえてきた声十六

 

 この時期、私は何もかもが物足りなさに満ちていた。部活動に熱中していた学生が、部活が終わった途端、試験もないのに授業に熱心になるなんて考えられないことだ。

 全力で打ち込めるものがたまたまあった幸福に私は気付くと同時に、それがない不幸に対して、全力で目をそらしていたのだ。

 だからたとえ怪しい壺を進められる集まりだっていったのかもしれない。そこには誰かの人生が詰まっていて、まるで自分という存在が空っぽだった私にとって、それですら中身の詰まった意味ある物に思えたのだから。

 本当に、やることがないとはさもしいことだ。

 指をパチンとはじいて「これだ!」といえるような感触はただただなかった。それでも、未知の物に触れる感触は、大学という放浪期間を埋めるのにはちょうど良いものに思えた。

 私はSNSでコンタクトをとってきた怪しい男と連絡をとり、九州旅行の途中で会うことを決めた。

 九州旅行の最中、山へ登り人里離れた山頂からの眺めに圧倒された経験は、今も時々思い出す。宿で出てきたカキ料理があたったのも忘れない。家族で父の実家で集まり、ひとときの団欒ののち、私は大阪へと親に送ってもらった。

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